本来の「ギフテッド」と
間違った「ギフテッド」のイメージ

現在、ギフテッドという言葉とそのイメージは、本来の姿からかけ離れ一人歩きしています。
その要因としてニュースやフィクションによる イメージの刷り込みがあります。

ニュースでは著しく成功したギフテッドや、 子どもながら大人さながらの知性を持つ子どもを、 これがギフテッドだとギフテッドの象徴のように報道します。 しかし、ギフテッドが全員成功し、 子供時代は神童だったわけではありません。 ギフテッドも運や才能、環境に恵まれて成功します。
逆に言えばそれらに恵まれなければ成功することはできません。 それはギフテッドも普通の人も同じことです。
著しく成功した人をギフテッドのあるべき姿と報道することは、 7月生まれの偉人を多く挙げ、 7月生まれは天才だと言っていることと何ら変わりがない間違った考えです。

一方フィクションなどでは、ギフテッドは 2E(twice-exceptional)と呼ばれる ギフテッドと発達障害が併発している人物が 多く取り上げられます。
その理由は、その名前が示す通り 2Eの人物は二重に特別なのでその個性も二倍です。
非常に目を引きやすく、 フィクションの主人公にうってつけです。 何かがものすごく得意な一方で、 普通の人ができるようなことができない。 このような人物は稀有なギフテッドの中でも さらにごく一部の存在です。 彼らはより特別な支援が必要なギフテッドではありますが、 その数と反比例してフィクションで 多く取り上げられることによって、 ギフテッドの間違ったイメージが 広がることの要因の一つとなってしまいました。

世界中でギフテッドが発達障害と誤診

世界中でギフテッドが発達障害と誤診されるケースが多発しています。
その理由は、ギフテッドと発達障害の特徴が 傍目には似ているからです。
例えばギフテッド児は授業が簡単すぎて面白くないので、授業と関係ないことをして遊んでいるように見えます。
一方、発達障害児は授業が分からないから遊んでいたり、多動の症状が出て遊んでいるように見えたりします。 結果、ギフテッドの正しい特徴が周知されていないため、現場ではギフテッド児を発達障害と勘違いするケースが頻発しています。

先進国では発達障害児が増加傾向にあります。 その原因は諸説ありますが、発達障害が増加していることによって、医師が安易に発達障害の診断をするようになった。 という負のサイクルが原因ではないかと言われています。
よくある風邪の症状と、風邪ではないが風邪と症状が似ている難病があれば誤診は必ず起こります。 同じようにギフテッド児が発達障害と診断される例が世界で多発しているのです。

発達障害と誤診されたギフテッドは発達障害用の学習を受けることになります。 結果ますます授業がつまらないものになり、場合によっては不登校に陥るでしょう。 それだけならまだしも、発達障害用の薬を処方される場合もあります。 結果、薬の副作用のみを受けることになります。 副作用は多岐に渡り、慢性的なイライラ、不眠、食欲の減退などの症状が出ます。
発達障害と誤診されたギフテッドは成長に大事な子供の時期に適切な教育を受けられず、 また薬の副作用により脳や体の成長も妨げられます。
このような期間が長く続くと、多くの場合、精神的な障がいや脳障害が残り、 通常生活を送ることも困難な状態になってしまう可能性が高いです。

ギフテッドの特徴は強い感受性

ギフテッドの研究家であったポーランドの 精神科医カジミシェ・ドンブロスキは、 ギフテッドの特徴の一つとしてOE(Overexcitability)が あると提唱しました。

私たちはドンブロスキの提唱を推し進め、 ギフテッドの特徴であると言われている 知的好奇心や優れた能力、知能の高さなどは、 OEの中でも感覚性OEに寄るところが大きいと考え、 ギフテッドは感覚性OE、 分かりやすく言い換えると「強い感受性」を 先天的に持つため、 後天的に前述したようなギフテッドの特徴を 持つ可能性が高くなると結論付けました。
多くのギフテッド研究でギフテッドの特徴とされるものが、 その特徴がある場合もあり、 ない場合もあると 曖昧にされている理由もこの説で説明できます。

ギフテッドが先天的に持つ特徴は「強い感受性」のみであり、 他の特徴は後天的にもたらされ、 また、遺伝の影響を多大に受けます。 よって、それらの特徴はある場合も ない場合もあるという研究結果になるのです。

『テストの点数が低いから ギフテッドではない』が間違っている理由

ギフテッドは「感受性」が強いという先天的特徴により、 後天的に大きく成長する可能性の高い人物のことを指します。
ギフテッド=感受性が強いは正しいですが、 ギフテッド=頭が良いは間違いです。
幼少期から発達障害と誤診され、適切な教育を受けられなかった場合、 例えギフテッドだとしてもIQテストやペーパーテストの点数は低い可能性が高いです。
そもそもIQテストはIQを測るものであり、ペーパーテストもその範囲の知識をを問うものです。 よってその結果をギフテッドかどうかを判別する材料にするのはそもそも間違っています。 IQテストやペーパーテストの点数が低いギフテッドこそ支援が必要です。
テストの点が低いからといってギフテッドではないと結論づけるのは間違いです。

従来のギフテッド研究の問題点

従来のギフテッド研究では感覚性OEの値が他のOEに比べて有意に高いという研究結果は出ていません。 しかしそれは今までのギフテッド研究に問題があったためです。
現在、ギフテッドの研究をする際、 サンプルとなるギフテッドは多くの場合、 ギフテッドスクール・クラスに通い、 ギフテッド教育を受けている者になります。 しかしここに大きな問題があります。 多くのギフテッドスクールはギフテッドと タレンテッドの区別をしていません。 その理由は大きく3つあります。

1つ目は診断上の理由です。
ギフテッド診断の大部分をIQ診断に委ねているため、 ギフテッドとタレンテッドの区別がつかないのです。

2つ目は制度、経営上の理由です。
「ギフテッド」や「タレンテッド」は 教室で行なわれる大人数教育に向いていません。 授業が面白くないので別のことを始めてみたり、 遊んだりし始めます。 言い方は悪いですが、彼らは授業の邪魔になることが よくあります。 そのため通常クラスから移動させ、 特別なクラスを作って少人数で授業を行ないます。 この分け方は、通常クラスで勉強する子達、 ギフテッド、タレンテッド、 教師、運営者の全てにとってメリットがあるので 結果的には正しい分け方になっています。 よってギフテッド、タレンテッドを 区別していないことが多いのです。 また、ギフテッドはタレンテッドと比べると数が少ないため、 ギフテッドだけの学校では 経営が成り立ち辛いという問題もあります。 結果、ほとんどのスクールはギフテッド・タレンテッドスクールと銘をうち、幅広く生徒を集めています。

3つ目は教育、倫理上の理由です。
ギフテッド・タレンテッドスクールの中には、 ギフテッドとタレンテッドを明確に区別をして、 理解している所もあります。 しかしギフテッドとタレンテッドを分けて授業することは 避けています。 その理由はギフテッド用にカスタマイズした授業は タレンテッドにも有効なので、 クラスを分ける必要性が薄いためです。 また、保護者へ説明をする難しさと 理解を得る難しさもあります。 ギフテッドはその語源故に様々な誤解が生まれがちです。 「ギフト」を貰って生まれた子と、 そうではない子を分けることには倫理上、 多くの問題があります。

以上の3つの理由からギフテッドスクールは ギフテッドとタレンテッドを区別していないことが多いのです。 また、ギフテッドスクールにはギフテッドより タレンテッドの方がより多く在籍しています。 場合によってはギフテッドが一人もいない ギフテッド・タレンテッドスクールもあるかもしれません。 よって今までのギフテッド研究はギフテッド研究ではなく ほぼタレンテッド研究と言って良いものとなっています。
上記のような理由により、 ギフテッド研究における統計上の調査で正しいものはほとんど存在しないと言って良いでしょう。

ギフテッドとタレンテッドの違い

ギフテッドとタレンテッドは明確に違います。
ギフテッドは「先天的に高い感受性を持つため、後天的に著しく成長する可能性の高い人物」です。 タレンテッドは「すごく優秀な子」もしくは「特定分野に著しく才能のある子」です。
一番の違いはギフテッドが併せ持つ負の要素「受ける痛みやストレスも多くなる」をタレンテッドは持ち合わせていないことです。
よってタレンテッドには適切な教育を。ギフテッドには適切な教育と「支援」が必要になります。 そのため、ギフテッドとタレンテッドは区別する必要性があるのです。